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2008年11月16日 (日)

奥田碩のいただけない狼狽の裏を読む

トヨタ自動車の取締役相談役で、元の経団連会長の奥田碩が物騒な発言をした。
通常、政治家がその手の話をすると、マスコミの格好の材料となり、ニュースを賑わせる事となるのだが、財界の発言となると注目度は格段に下がる。
しかし、その発言の持つ意味は大きい。
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1908d8d5855326c4 奥田元経団連会長は11月12日、首相官邸で開かれた「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、厚生労働省に関する報道についてコメントし、「あれだけ厚労省がたたかれ るのは、ちょっと異常な話。正直言って、私はマスコミに対して報復でもしてやろうかと。スポンサー引くとか」と発言したという。(写真は別の日のもの) 朝日新聞

彼は来年10月に発足する日本年金機構の設立委員会の委員長であることから、その傷口に塩をすり込むマスコミに腹を立てたのだろうし、だいたい、そのような線で他のマスコミも報道・解説しているようだ。

しかし私は、そのような単純なことではないように思う。底のところを深読みしてみたい。(yh)

ご承知のように、世界経済は大恐慌の入り口に立っている。金融・証券会社のみならず、GMなどのアメリカ自動車産業も身売りの瀬戸際に立たされている。そうした経済危機のあおりで、トヨタ自動車も2008年11月6日に発表した09年3月期連結決算(米国会計基準)の営業利益予想は、前期比73.6%減の6000億円(従来予想は1兆6000億円)で、大幅な下方修正となった。
下方修正の主要な原因は円高によるものだが、まだ赤字になったわけではない。前年までは、毎年「過去最高」の収益を出し続けてきた企業である。しかしその利益は、株主と一部の経営者に廻るだけで、自動車を実際に作っている労働者である、従業員、下請け、派遣社員に廻ることはなかった。そして、いざ利益が薄くなると分かると、いっせいにこれらの労働者にしわ寄せをしてくる。ここ数日の間に、非正規社員、派遣社員の契約解除(実質的クビ)を連日のように言い渡している。
非正規社員、派遣社員のことを書き出すと長くなるので、ここでは以下のことだけに言及したい。そもそも、奥田が経団連会長で、小泉純一郎政権の時代に労働基準法と労働者派遣法を改正して、いつでも好きなときに労働者の首を切れるようにしたのが、この奥田碩である。
その奥田が日本年金機構の設立委員会の委員長であるというのだから、彼がなにをしたがっているのかがうっすらと見えてくる。

彼がなぜこのような物騒な発言をするのか、なぜここまで苛立ち、狼狽しているのか。

きっと彼を頂点とする、少数の金持ち連中は、過去何度か繰り返してきた方法によって、この経済危機を切り抜けようとしているのではないだろうか。それが、なかなか思うように行かなかったり、「協力して当然」のマスコミが痛いところをつつくものだから、つい語気も荒くなったのだろうと考えている。

その、危機を切り抜ける方法とは、戦争を起こしての植民地化への道である。

この手法を手短に理解する為に、本山美彦氏がその著書「金融権力」(岩波新書)で言及した一部を抜粋して紹介したい。
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戦前の日本を崩壊に導いたのは、農村の貧しさであった。不在地主一人の収入が、村のすべての小作人の収入を上回っていた。人は、絶対的には低くても、平均線上に自分の収入があるとき、それほどの怒りに駆られることはない。しかし、突出した少数の人たちに収入が独占され、圧倒的多数の人々が平均よりはるかに下の収入しか得られないとき、人は、強烈な貧しさの感情に打ちのめされる。戦前の日本の農村の多くは、後者の状態にあった。
  ・・・・
農村は生活苦から借金を重ね、借金返済のために農地を手放した。悪辣な金貸しが農地を取り上げて大地主になった。土地を手に入れた金貸しは、土地なき農民に農地を貸し出し、小作料をつり上げた。土地なき貧農が増えれば増えるほど、小作料はつりあがった。農民の貧困が不在地主の懐を潤した。そして、地主に転がり込んだ莫大な小作料収入は、農地の改良事業には投資されず、さらなる農地の買い占めに投資された。
  ・・・・
しかし、戦前の為政者たちは、農村の改善よりも、植民地の農地を零細な日本の農民に分配する政策を選択した。悲しいことに貧しい農民ほど軍国主義時代には好戦的にならざるを得なかった。土地なき農民たちは、他国を侵略する自国政府によって植民地の土地を分配してもらえたからである。
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つまり、好戦的な政治、政権、社会体制は、その戦争を遂行する為に恒常的な軍隊を維持する必要がある。つまり、安い軍事労働力を常に作り出す必要があるのだ。国民全体が中間層に位置し、一定の収入を得ていたなら、好き好んで軍隊に志願する人々はいないだろう。何よりも圧倒的な貧困が、生活の為、家族のために、軍隊へと志願させる。

そういう状況を作り出すことを、奥田達、金持ち連中が、この後の危機を乗り切り、より金持ちへの道を歩む為に、目論でいることなのだろう。つまり、現在のアメリカ型政治の日本版として。

彼が腹を立てる原因は三つあるように思う。
一つは、「自分達のもの」(と思い込んでいる、国民の税金で成り立つ)財源から「福祉などという必要でないものに」支出していかざるを得ない状況に対しての苛立ち。
一つは、推し進めたい貧困化政策に逆行する、「厚生労働行政の改善化」に対する苛立ち。
一つは、本来、子飼であった筈のマスコミの「裏切り」に対する苛立ち。

小泉政権のときは実にうまく行った。生活が向上すると信じ込んだ国民の支持もあり、奥田にとって都合の良い法案をいくつも通すことが出来た。現在では、秋葉原事件を引き起こす要因にもなった労働者派遣法は、民主党だけでなく、社民党の賛成も取り付け成立した。
しかし、安倍政権からは少し雲行きが変わり、北朝鮮への対応では、「朋友」であった筈のアメリカにも裏切られた。こんなはずではなかった・・・・と。 (yh)@

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